雄々しい立役が粋な見得を切り、女方(女形)が艶やかさで舞台を彩る歌舞伎!
歌舞伎は伝統芸能の中でも、独自の美意識を持って完成されたものです。
「演じ」そして「舞い」と展開するストーリーの随所に、観客をほればれさせる多くの魅力を含んでいます。
今回は歌舞伎の魅力とは?舞台の名称と意味を知っておくと歌舞伎がいつもより楽しめます。
歌舞伎の歴史と由来
歌舞伎は17世紀初頭、都市芸能のひとつとして誕生しました。
「近世の2大演劇」と共に称される人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)とほぼ同じ頃のことでした。
しかし、そのルーツは今から約400年ほど前、「出雲の阿国(おくに)」によるかぶき踊りにあります。
「かぶき踊り」のかぶきの語源は「かぶく」、すなわち「傾く」。
それは「まともではない風変わりの」との意味を持っていました。
阿国も例外ではなく、男装して茶屋女と戯れる様子を見せたりもしていたそうです。
人形浄瑠璃も歌舞伎とは縁が深いです。
歌舞伎の三大傑作とよばれる
「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」
「義経千本桜(よしつねせんぽんざくら)」
「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」
はいずれも人形浄瑠璃のために書かれた作品です。
それは、近松門左衛門の時代の後期は、浄瑠璃が優勢だったことを物語っています。
この頃の歌舞伎は、浄瑠璃の名作や演技を取り入れるので精一杯だったようです。
しかし、1750年以降は歌舞伎が浄瑠璃に取って代わるようになり、「回り舞台」と「花道」という二大機構もできあがり、歌舞伎は完成期に至ったのです。
こうして歌舞伎は、江戸時代には武家階級や裕福な商家の人々だけでなく、商店で働く者や職人など庶民に広く親しまれる興行となったのです。
歌舞伎の魅力とは
揺るぎない日本の古典的伝統芸能のひとつとして残る歌舞伎だが、数ある伝統芸能の中でも、そのおもしろさは独特です。
ストーリーでいえば、時空を超えた奇想天外さ。
実際の事件をもとにしていても、その展開にいい意味でのハチャメチャさがある。
色彩のあでやかな舞台や、からくりを使ったりする装置、子役を使って遠近感を出す演出の手法なども歌舞伎ならではでしょう。
初心者の方はまず、
「勧進帳(かんじょうちょう)」
「千本桜」
「忠臣蔵」
など、もととなる物語自体に馴染みのある演目を見ることをおすすめします。
このような作品であれば、ストーリー展開もわかりやすいし、役者の演技もこなれているので見応えがあるはずです。
歌舞伎ならではの趣として、役者が花道の七三(しちさん)とよばれる位置で見得(みえ)を切ったときや有名なせりふを発したときに大向こうからかかる「掛け声」があります。
絶妙のタイミングで屋号を呼ばれるとき、役者は冥利につきるといいます。
劇場でのこんな雰囲気も、また楽しみのひとつでしょう。
独特の美意識で彩られた歌舞伎の舞台を垣間見れば、江戸時代を生きた庶民のためのエンターテインメントの世界が感じられるはずです。
歌舞伎 舞台の名称
歌舞伎の舞台にはいろいろな呼び名の仕掛けがあります。
①下座(げさ)
舞台の下手の花道の突き当たりにしつらえられた、黒い簾(すだれ)と板に囲まれた囃子方(はやしかた)の席。
別名黒御簾(くろすみ)とも呼ばれています。
芝居の効果音や下座音楽と呼ばれるBGMが演奏されます。
② 花道(はなみち)
舞台「手から客席に向かって直角に延びる登退場の通路です。
演日によって、山道、廊下、海や空中など舞台の一部として自由自在な空間を作り出します。
上手(かみて)にも仮設されることがあり、上手の花道を仮花道と呼ぶのに対し、常設の花道は本花道とも呼ばれます。
③ すっぽん
花道の七三、すなわち揚げ幕から7、舞台から3の割合の位置に四角く切った穴です。
ここからは、幽霊や亡霊、化身、妖怪、忍術使いなど、通常の人物以外が迫り上がったり、迫り下がったりするのに使われます。
その出入りがスッポンが首の出し入れに似ているためとか、切り穴の形が亀甲形であるからとか、迫り切って床面が花道にはまるときスポンという音がするからとか、その山来には諸説あります。
④迫り(せり)
舞台の床の一部を切り抜いて、その部分が上下するように作られた仕組みです。
役者や大道具(舞台装置)などの上げ下げに使います。
⑤回り舞台(まわりぶたい)
舞台の床を円形に切り、前後に2場面あるいは3方に3場面などを飾り、回転させることで舞台転換するための仕掛けです。
⑥大臣柱(だいじんばしら)
上手の「チョボ床」を支える奥の方の柱と、下手の下座の奥の方の柱のことです。
⑦定式線(じょうしきせん)
上手と下手の大臣柱を結ぶ線。
③大欄間(おおらんま)
ふたつの大臣柱を上部でつなぐ黒塗りの羽目板のことです。
⑨揚げ幕(あげまく)
花道あるいは上手の出入り口に掛けてある垂れ幕です。
紺地に白抜きで、劇場の紋が染められています。
⑩ チョボ床(ゆか)
舞台上手の御簾のかかった義太夫節の演奏場所です。
義太夫節の太夫が舞台で使う台本の語りの部分に傍点を打つことから、義太夫節や義太夫語りのことを「チョボ」と呼ぶところからその名がつきました。
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